一気に最上階、15階まで駆け上がる。
機動隊が隊列を組んで包囲しているのは、
ビストロ・カンパーニュという名前のフランス料理店だ。
ドアはガラス製で内部が丸見えだが、
機動隊に邪魔され、小泉の位置からは見えなかった。
犯人を説得しようとする、刑事の声が聴こえる。
それに答えるのは、怒声。
店内から吠えるような大声が聞こえるが、何を言っているのか聞き取れない。
かなりの興奮状態にあるようで、言葉になっていなかった。
小泉は機動隊の後ろに、捜査一課の長、小山内の背中を見つける。
一課の刑事達を掻き分け、小泉は近寄った。
「小山内部長!」
小山内が振り返り、眉間にシワを寄せた。
小泉が来たことを、快く思わない表情だ。
小泉は小山内と肩を並べる。
小山内は前方を睨みながら、こう言った。
「今回は… お前を関わらせるわけに行かない。
人質の中に小泉うらら… お前の嫁さんがいるからだ」