白い床のあちこちに血痕が見える。
それは所々に血溜まりを作り、エスカレーターの方まで続いていた。
ナイフを持ち無差別に人を襲っているという男は、
買物客を切り付けながら、エスカレーターで上に上がったようだ。
小泉は周囲に視線を巡らせ、エスカレーター付近に及川の姿を見つける。
及川は捜査一課の刑事。
SMRを目の敵にする、性格に少々難がある男だ。
小泉は及川に聞く。
「おい、状況を教えてくれ。
犯人は、もう確保したのか?」
及川は眼鏡の奥の細い瞳を更に細め、小泉を見た。
半年前は、復活した破壊の光を捕らえるために共闘したが、
それで親しくなったということはない。
及川にとってSMRは、自分の捜査にケチをつける存在に変わりなく、
相変わらず負の感情を持っていた。