すぐに見えてきた北武百貨店前は、救急車と警察車両が取り巻いていた。
負傷者多数と聞いた通り、次々と怪我人が運ばれ、
数台の救急車がサイレンを鳴らして出て行った。
入口付近は規制線が張られ、警察官が交通整理に追われている。
野次馬達を掻き分け、小泉は黄色いテープを跨ごうとする。
すると、所轄の若い警察官に止められた。
「そこの人、勝手に入らないで…」
彼が最後まで言わない内に、小泉は無言で警察手帳を提示する。
「し、失礼しました!」
相手の敬礼に応えている余裕もなく、小泉は建物に駆け込んだ。
建物内部は見渡す限り、警察官しかいない。
客や店員は、避難させられた後であった。