「そうだ、帰るぞ。立て!」
小泉に励まされ、うららは自立で立ち上がった。
手を引かれ、走り出す。
ドォンと再び爆音が響いた。
数メートル先で柱が破壊され、床も天井も崩れ始めた。
杉村の遺体が、崩れた床と共に視界から消えた。
前方はまだ崩れていないが、一刻の猶予もない。
小泉の走る速さに、うららも必死に付いて行った。
床の崩れが、二人を追いかける。
2階フロアは、消滅寸前であった。
小泉とうららは、やっと東階段に辿り着いた。
二人が下りる前に、誰かが駆け上がって来た。
「小泉警部!」
そう呼んだのは、知本だった。
脱出の遅い小泉を心配し、危険もかえりみずに捜していたのだ。