小泉とうららは無事だった。
杉村が素早く動いて盾となり、二人を守ったからだ。
小泉は慌てて、杉村を抱き起こす。
その腕に抱えて、驚きの目を向けていた。
「なぜ…」
なぜ助けたのかという問いに、杉村は口から血を吐きながら答えた。
「分からん…頭で考えるより先に…体が動いてしまった…
俺も… まだまだ甘かったということか…」
小泉の目に涙が溢れた。
杉村の下で働き、憧れた数年が頭に流れていた。
捜査のイロハを教えてくれたのは、杉村だった。
時に怒鳴られ、時に導いてくれて…
刑事としての小泉を育てたのは、他ならない杉村だった。
小泉の心には、悲しみと喜びが混在していた。
憎しみに心を殺されかけた杉村だが、最期の最期で戻ってきてくれたと感じていた。