うららは小泉の後ろで、震えていた。
杉村の憎しみの言葉が胸に突き刺さる。
足に力が入らず、ヘナヘナと座り込んだ。
小泉の両親が、あの事件の被害者だということも初めて知った。
申し訳ない気持ちになってしまう。
自分はアバタリ。
小泉から両親を奪ったのは、自分のような気がして、
ハラハラと涙を流していた。
杉村が引き金を引いた。
廊下に銃声がこだまする。
弾は小泉の足先数センチの床に、めり込んでいた。
「アバタリを渡せ。
今度こそ、教団の全てを葬ってやる。
それとも… 撃ち合うか?
その傷で、俺に勝てると思うのか?」
それは、杉村の最終通告だった。
外は雪が降る。
夜明け前の廊下は深々と冷えているが、
小泉のこめかみには、汗が一筋流れていた。
撃ち合えば、やられるのは確実だった。
杉村が言うように、肩を撃ち抜かれた右手では、銃を構えるだけで精一杯。
まともに引き金を引ける自信はない。
それよりも何よりも、やはり杉村を撃てないと感じていた。
甘いと言われても、小泉は心を鬼に出来なかった。