「杉村警部… 銃を下ろして下さい。
あなたを撃ちたくはない」
杉村は薄く笑う。
「馬鹿野郎が。相変わらず甘っちょろいこと言いおって…
捜査に私情を持ち込むなと、教えただろ?」
「あなたに言われたくない!
私情を挟んでいるのは、あなたの方だ!
なぜこんな企みを…
警察の誇りを捨てたのですか!?」
小泉は怒りをぶつけた。
杉村の企みは… 10年前の仇討ち。
一人であの事件にケリを付けようとしているのだ。
杉村の銃口は、小泉を通過して後ろのうららを狙っていた。
杉村は目つきを鋭くして言った。
「警察の誇りなど、持ってどうなる。
10年前のあの日… 俺の目の前で何百という人間が死んだ。
助けられんかった。
己の無力さを、あの時ほど痛感したことはない。
桜庭警視長の指揮下、
俺は…現場のトップとして教団に踏み込んだ。
教祖湯傘を捕らえたのは俺だ。丸山陽子もな。
その場にいた信者全員に手錠をかけたんだ。
それなのに…
起訴に至ったのは湯傘の周り、一部分のみ。
当時末端信者だった丸山陽子は、何も知らなかったと罪に問われず、
他多くの信者も同様に、野に放たれた…」