うららは涙を流し、駆け出した。
小泉の広げた腕の中に、飛び込もうとした。
小泉まで後少しのところで…
うららは背後に銃声を聞いた。
引き金を引いたのは、丸山陽子だ。
その手には、隠し持っていた拳銃が握られていた。
トカレフTT-33。
小泉は一目見て、中国からの密輸品だと理解した。
火を吹き飛び出した弾丸は、うららの髪をかすり、
小泉の肩を撃ち抜いていた。
小泉の右肩から血が吹き出した。
激痛に顔をしかめる。
傷口を押さえても、指の間から血が溢れるように流れ出る。
うららは小泉まであと数歩の距離で、足を止めるしかなかった。
丸山が笑いながら言った。
「アバタリ、戻りなさい。
お前は桜庭うららなどではない、アバタリだ。
母の下に戻りなさい。
戻らないと… その男を殺す」