すぐに足は止まってしまう。
小泉と丸山の中間地点で、立ち止まり俯いた。
小泉はうららを真っすぐに見ていた。
その目に、憎しみはなかった。
一度はアバタリに憎しみも湧いたが、それを乗り越えた目をしていた。
白装束を着せられても、うららはうららだと感じている。
彼の目に映るのは、アバタリではなく“桜庭うらら”であった。
「桜庭うらら」
小泉が呼んだ。
その声は優しかった。
うららは顔を上げる。
その目には涙が溜まり、今にもこぼれ落ちそうだった。
小泉はもう一度呼びかけた。
「うらら、こっちに来い。
お前を助けに来た。俺の所まで歩いて来い」
アバタリではなく、うららと呼んでくれるのが嬉しかった。
捕らえにではなく、助けに来たと言ってくれて、
心の底からホッとしていた。