小泉は倒した二人を一瞥すると、うららに向けツカツカと歩き出す。
丸山陽子はうららを背中に隠す。
ジリジリ後退り、小泉と距離を取ろうとする。
小泉は10メートル離れた位置で足を止めた。
低く、諌めるように話しかけた。
「丸山陽子だな?
諦めろ。桜庭うららをこちらに渡し、投降しろ」
丸山は数秒沈黙する。
それから言った。
「分かりました。降参です」
やけに素直に従う彼女に、小泉は目を鋭くした。
丸山は掴んでいた手を離し、うららを自分の前に出す。
「行きなさい」
そう言って、うららの背を押した。
うららは恐る恐る小泉に近付く。
すぐに駆け寄らないのは、恐れているからだ。
自分がアバタリであることは、小泉ならきっと知っている。
嫌われてしまった。
軽蔑され、憎んでいるに違いない。
そう思い込み、怖くて足が前に進まないのだ。