丸山陽子が、一人の名前を呼んだ。
信者の群れから立ち上がったのは、20代後半の男。
狂った信者の中では、彼は幾らかまともに見えた。
見目も良い方だろう。
神妙な面持ちで中央に進み出て、彼は丸山の前にひざまずいた。
丸山は男の頭に手を乗せ、呪文のような言葉を掛けてから、こう言った。
「そなたの働きに期待する。
アバタリ様を懐妊させよ」
男の役目は、うららと交わることだった。
湯傘の残した予言
『娘の腹から 我 蘇らん』
その言葉を現実のものとするために、うららに精を注ぎ込もうとしていた。
男は白装束を脱ぎ捨てる。
裸になり、押さえられているうららに近付く。
怪しげな言葉を唱える信者達の声は、ますます強く大きくなる。
うららは、泣き叫ぶしか出来ない。
男の股間にそそり立つものを見て、自分が何をされるか理解してしまった。
揺れるロウソクの光りを、男の影が遮った。
ベッドに上がり、うららのスカートに手を掛ける。
その時…
広間のドアが勢いよく開けられた。
飛び込んできたのは、見張りをしていた信者だ。