3階の廊下を歩いている時、杉村は窓の外に光を見た。
距離は1kmほど先。
林の向こうの遠くの道路に、こっちに向かう車のライトが見えていた。
杉村は足を止める。
窓の外を注視する。
木々の隙間に見えていた車のライトは、かなり離れた位置で急に消えた。
杉村は闇に目を凝らし、呟いた。
「来おったか…」
杉村が見たものは、小泉の車のライトだった。
闇に紛れて、ゆっくり慎重に近づいていた。
間もなく、この建物は警察に包囲される。
それも理解した上で、杉村はニヤリと笑った。
「甘っちょろい奴らに、ケジメの付け方を見せてやるか…」
誰もいない廊下に言葉を残し、
杉村は、当てがわれた部屋に戻って行った。
――――…