「ちょっと~、いつまでそんなことしてるつもりなのよ?あんたらさ、いつかは女に刺されるわよ~?」
そう言ってケラケラ笑ってるのは 難波 春香(なんば はるか)
俺らのことをずっと見てきているいわば幼馴染だ。
「うるさいわ~。春香はさ、ずっと彼氏がいないよね~、何?恋とかしてないの?」
悠は気にもせずに言うけどな、どう見たって春香が好きなのは悠だろうが!
きっと気づいてないのは悠だけだと思う。
「う、う、うるさい!悠には関係ないし!バカ!」
「春香、てめえ。バカとはなんだ」
「この前のテストで赤点パレードだったのは誰よ?」
「は、はるかあああ!それはマジで言うな、わかったな?」
毎朝やってんのにホント飽きねえわ。
心の中では春香の純粋な気持ちが羨ましかったから、
悠にはちゃんと真正面向いて欲しくて、でも、ずっと言えなかった。
ただ、お前の目の前をちゃんと見ろって言うだけなのに。
言えなかったのは、笑われると思ったからじゃないと思う。ただ俺が弱いだけだ。
そうやっていつもいつも逃げてるんだ。
「ねえねえ、あきちゃん!今日ね転校生くるんだってよ~!おそわんどいてや~!」
「おいおい、春香~ さすがの晃でもそれはないだろ」
「お前が言うなよ悠。」
「相変わらずだねあんたら。ホント飽きないわ~」
「春香!美人なの?うわ~楽しみ!」
「美人でもなんでもいいけどさ、悠は近づかんといてね?妊娠しちゃうよその子~」
春香なりの嫉妬の表し方なのだろう。
少し微笑ましかった。
風が夏の始まりを知らせていて、
俺は何かの始まりの予感がしていた。