こんなに人と顔を寄せたのなんて何年振りなんだろう。

いや、だって俺がデカイから。

まずそもそも他人と顔の高さが合わないし、普段。

な……あ、そうか。

俺、さっき廊下に座ったままなんだ。

だから、彼女が膝立ちになれば流石に見下ろされる位の格好にはなる。

それにしても、だいぶ接近されてはいるが。

そうか、こうすれば良かったのか…って。

いや、そんな場合じゃないんだって。

ばくばくと鳴る心臓に反して、息が上手くできない。

「…あー…どうした」

やっとのことで話を促すと、彼女は更にずいと顔を近付けてきた。

俺の膝に手を置き、身を乗りだし。

……や、だから近いって。

「ち、違う…から」

「は?」

何が。

俺が真意を掴めずに眉を潜めると、彼女は慌てたように言葉を付け足した。

「そ、その…す、好き、だよ。ホントに」

小さい彼女の声が至近距離から伝わる。

真剣な声に、余計に心臓が跳ねた。

まさかその……愛の告白、めいたことを言われる心の準備は出来ていなかった。

何も言えずにいると、空白の後に彼女の言葉が続く。

「だから…嫌いになる、とか。…ありえない、から……」

あ、ああ。

そう繋がる、のか。

彼女なりのフォローだった訳だ、一応。

……不器用か。

俺が言えたことでは勿論無いんだが、彼女も何と言うか、その…相当。

その割に言うことは直球だけど。

いきなり近いし。

そう言えばさっきから膝に乗ったままの手が伝えてくる熱が、気持ちいい。

場違いなのか知らないが……

そんなことを、思った。