「あ…ああ。

そりゃ大事だけど、さ…」

そう言ったと同時に、体から力が抜けた。

思わず、壁を背にしてズルズルと座り込んでしまう。

「えっ…ええ?」

と目を丸くした彼女もまた、俺の正面に屈んだ。

「どうか…した?」

心配げに首を傾げる彼女。

その様子を見るに、本当にそれだけらしい。

良かった…。

目を閉じ、はぁー、と大きく息を吐く。

「え…え、えっと……え?」

おろおろと瞬きをする彼女に

「…いや、大丈夫。ちょっと……まあ、安心しただけ」

と言うと、ゆっくり首を傾げられる。

「あんしん?」

「だから……えっと、だな」

どう言ったら良いものか。

いや、普通に嫌われたとか思って心配してただけなんだけど…

それ、言うのって恥ずかしい気がする。

言葉を探していく度に、

『うわ俺そんな事思ってたのかよ』

的な羞恥に襲われるんだが。

なんかあの、もうやだ。

しかし、話し合っていきたいだの思ったのも、言ったのも俺だ。

ここは有言実行すべきだろう。

「えーと…その。俺が、勝手に嫌われたと思って落ち込んでた?か…うん、それだけだから」

ぐだぐだと言う。

だから気にするなと言うつもりだったのだが。

続きを口に出すことは出来なかった。

彼女が、ぐいと近付いてきたのだ。

…はっ?

ち、近。

その、色々と…近い。