がた、と音を立てて椅子から立ち上がる。

彼女はそれに怯えたのか身を縮こまらせた。

しかし今日は、そう怯えながらも彼女の方から口を開いたのだ。

「あ…あの、ね。…ごめんな…さいっ!!」

ばっと勢いよく頭を下げた。

風の抵抗を受けながらも、ふわふわの髪も一緒に揺れる。

柔らか、そう。

いや、そんな場合じゃなくて。

何か言わなければ。

俺が何も言わないので、彼女は頭を下げ続けている。

「…あー、

とりあえず顔あげて、下さい」

極力声音を弱めて言うと、そっと体勢を戻す彼女。

しかしまだ不安そうに、涙が溜まった瞳でこちらを見上げている。

…でも、なあ。

さっきの『ごめんなさい』って…何だ。

やっぱり付き合えません?

他に好きな人ができました?

…他に彼氏が、できました?

いや、それはさすがに。

道徳的に無いんじゃないだろうかとは、思うけど。

でも最近の高校生ってどうなんだ。

分からん。

自分も高校生なのだが、だからこそ余計に分からん。

クラスで騒いでるような奴等の気持ちを分かった事がない。

…別に分かりたいわけでもないが。

でも今は、彼女相手にだけは。

歩み寄るしかないだろう。

…いや、違うな。

ただ俺が、彼女を、理解りたいんだ。