…え?

俺はと言えば、呆然とつったっているしか出来なかった。

不甲斐ない話ではあるのだが。

なんだ、これは。

何か思うより先に、頭が真っ白になっているのを感じる。

さっきのとは、それはそれで違う感覚だったが。

一向に相手が俺の方を向く気配も無い。

しばらく待ってみたが、状況は変わらず。

…しばらくだと思ったが、なにぶんパニック状態だった。

ひょっとしたら一瞬だったかもしれない。

しかしその間にも胸中で1万語が流れる。

思わず舌打ちをすると乱暴に踵を返して自分の教室に入った。

荷物を席の近くに放り捨てると、椅子に座る。

何だったんだ、さっきのは。

無視って。

ひょっとして嫌われたのか?

そんな。

唯一喋ったあの時だって、そりゃ気の利いた台詞の1つも言えやしなかったが。

好かれる覚えも無いと言えば無かったが、いきなり嫌われる覚えも無い。

…と、思うんだが。

どうだろう。

それとも冷めたとか?

そんな。

中学生かよ。

どういうことだ。

ひょっとして、罰ゲームだったとか?

…嫌な想像だ。

縁起でもない。

でもそうでないとしたら、何があったっていうんだ…

だめだ、こんな時にも自分がどうしたらいいのか分からない。

ちゃんと話しかけた方がいいのか。

そっとしておいた方がいいのか。

駄目な奴だな、俺…

俯いて唇を噛むと、じわっと涙が出そうになった。

っ、格好悪い。

ぐっと上を向いて涙が零れるのを防ぐと。

「…あ、あ…の」

廊下からあの声が聞こえた。