緑涼達は、リビングの床に座り込む。椿はお茶を用意するために一人キッチンへと向かっていった。
「で、お前達は何でここに来たんだべ?」
緑涼は、腕を組みながら隼丸達にそう尋ねる。
「この付近に、地獄からの脱獄者が潜伏しているようなんだ。」
弦九朗の言葉に耳を疑う緑涼達。
どういうことなのか、椿は茶を入れながら不思議そうにその光景を伺っていた。
「で、俺達は、閻魔大王の命を受けてだ、その脱走者を探しに来たって訳よ。」
弦九朗は、腰に吊るしていた大きな徳利を手に取ると、それに口をつけ一口飲んだ。
「で、その脱獄者って奴は誰なんだ?」
深刻な顔をしながら、緑涼は弦九朗に尋ねる。すると、弦九朗は、徳利を床に置き、脱獄者の名を口にした。
「酒呑童子の弦龍(げんりゅう)と茨木童子の虎黎(これい)だ。こいつら兄弟は、かなり凶悪でな・・・」
弦九朗は、本来見せることができない彼らの詳細情報を緑涼に渡す。
「おい!弦!」
驚いて、緑涼から資料を取り上げようとする隼丸。しかし、弦九朗は緑涼に伸びていた隼丸の右手をつかみ制止してこう言った。
「四の五の言ってらんねぇだろ!とにかく早く捕まえねぇと被害者が広まるだけだ。この近くに潜伏しているって情報がある以上、こいつらにも知ってもらうべきじゃねぇのか?」
「でも・・・」
不服な顔をする隼丸。何かを言い返そうとする彼を遮るかのように深波が重い口を開いた。
「確かに・・・。相手が第一級の凶悪犯である以上、知ってもらう必要はあると思う。ここだって襲われないとは限らないし。」
深刻な話で重苦しい空気が流れていくリビング。その様子を遠くから眺めている存在がいることには気づいていなかった・・・