「あっ!あそこだ!!」
「「奥方様!!」」
凛香と椿が空を見上げると、上空に止まる車が姿を変えると同時に、3つの影が彼女達に近づいてくる・・・。
「輪入道!!遊佐!!砂靭!!」
その影が誰なのか気ががついた凛香は思わず力いっぱいに叫ぶ。そして、彼らは地上に着地した。
「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫ですか、奥方様。」
白の着物に黒い袴の男達。
一人は、黒縁の眼鏡にショートカット。もう一人は、少し細い目で腰元に長方形の袋が刺さっている。
「大丈夫といいたいとこなのじゃがな・・・。」
凛香はそう言うと、遊佐の耳を引っ張りながら「ここはどこじゃ(怒)」と睨みをきかす。
「こ、ここは・・・」
「桃源郷っすよ、姉貴(笑)」
遊佐の横にいた黒スーツ姿の厳つい男“輪入道”の広重(ひろしげ)がそう答えた。凛香は、さっと遊佐の耳から手を離すと「そうか、ここが桃源郷か。」と口にした。
「あ・・・あの・・・。」
「おっ、椿ちゃん、だよな(笑)」
広重は、にこっと笑うとそっと右手を差し出す。
「どうして、私の事を知ってるんですか?」
椿が不思議そうにそう尋ねると・・・
「こやつ(=広重)と私、それにあの馬鹿(=祇儀)は、正嗣が子供の時から付き合いがあってな。こやつは、正嗣につく“悪い虫”を払いまくっていたんじゃ(笑)」
疲れきった表情で、凛香はそう話す。
「そうっすね(笑)」
広重はそういうと、笑いながら「よろしくな。」と椿に話した。