「何とか目的地に着けばいいんだけど・・・。」
祇儀の困った声が光の間の中に響いていく。そして沈黙が部屋を包んでいく・・・。
「清澄。」
「はい。」
清澄は、パンっと手を叩いた。すると、黒い鞘に収まった刀が現れ、清澄がそれを掴む。そして、その刀を祇儀に手渡した。
「あんまり使いこなせないけど、持っとくことに越したことはないね。」
「そうじゃな。」
凛香も何かを覚悟したのか、椿の隣に足を運ぶ。
「凛香さん・・・。」
「大丈夫じゃ。心配するでない。」
凛香は、そういうと床に右手をつけた。すると、そこに紅い光を帯びた陣が現れ、そこから無数の文字が飛び出してくる。そして、その文字が部屋、そして列車を包んでいく。
「これでしばらくは、防げるじゃろう。」
凛香の右手が離れた時、部屋の空間が白から朱紫へと変わっていた。
薄暗い空間の中、禮漸は静かにキセルに火をつけ、ふっと煙を吐き出した。その目は、何かを決意したかのような鋭く、冷たい目だった。
「おら達も準備したほうがいいみたいだべな。」
「あぁ。」
緑涼と隼丸は、目を合わせることなくそう話す。その言葉を聴いた誰もが静かに武器を用意し始めた。
「椿。」
緑涼は、椿にそう呼びかけると、にこっと笑い「心配すんでねぇ。おら達が悪い奴らをやっつけてくるから。」と声を掛ける。
「待ってるから・・・待ってるから・・・」
椿は泣きながら、緑涼にそう話したその瞬間だった。