「旦那!あそこっす!」
弦九朗の指は、ボロボロの祠を指していた。正嗣がその場所に着くと、キュウキュウと泣きながら痛みに耐える狐の男の子と、苦しい呼吸を繰り返す男の子が横になっていた。
「かなり熱もあるね。もう大丈夫だからね・・・。」
しかし、その瞬間だった。
正嗣の頬を何かが掠める。そして、その掠めた場所から血がポタポタと流れ始めた。
「人間・・・さわんな・・・。」
正嗣を睨み付ける様に見つめる男の子。それでも正嗣は彼に触れた。
「さわんな!」
「僕は、何もしない。何もしないから。」
弦九朗は、正嗣の姿に不安を感じながらも必死で狼煙を上げ続けた。
「人間・・・は・・・俺達のこと、利用したくせに・・・殺そうとした・・・くせに・・・」
その言葉を聞いた正嗣は、心の中で怒りを覚えてくる。この子達にではなく、自分と同じ人間に対して・・・
「やっと見つけた!!」
祠の上のほうから、その声が聞こえて数秒後、コートを着た男、祇儀が上から降ってきた。
「正嗣君、どこ?」
「こっちです!」
祇儀は、弦九朗と共に祠の中に入ってきた。そして、子供達を見るなり「もう大丈夫だからな!すぐに元気にしてやるから(笑)」と言い、バックから、聴診器を取り出し子供達を治療していく。
「ちょっと、チクっとすっけど我慢しろよ。」
そういって、子供たちの小さな腕に注射をする。そして「ふ~っ。」と一息つくと・・・
「左の狐の坊やは、傷口から菌に感染。右の坊やは、たぶん毒のある食べ物を食べたことで食中毒を起こしている。一応、抗生物質を打ったから朝までには熱も下がって元気になると思う。」
「あ、ありがとうございました!」
「じゃ、ちょっと様子を見ましょうか(笑)」
小さな祠の前で正嗣と祇儀、そして弦九朗・・・大人達で看病を続けることとなった。