「「はあ・・・はあ・・・」」


「待ってよ、お兄ちゃん!!」
「遅せぇんだよ、てめぇは!!」


深い森を必死になって走る影が二つ。
森の木々に引っかかるたびにボロボロになっていく衣服をも気にせずひたすら走り続けていた。
そして、身を隠すのにちょうどいい場所を見つけると、その場所に身を隠しじっと身を潜める。


「お兄ちゃん・・・」
「大丈夫だ。もう大丈夫だ・・・」


小さくなりながら、必死で身を寄せ合い、息を殺す。今の彼らにはこうすることしかできなかった・・・。


「もう二度と戻るもんか、あんな所・・・」
「そうよ、戻りたくないわ、あんな場所に。」
「このまま逃げ切ってやっからな・・・。」
「追いかけてきた子は・・・?」
「俺が殺してやっから、心配すんな。」
「うん。お兄ちゃん大好き(笑)」


夜が明けるのをじっと待つ。
時間が判らなくなるくらい、浴びることがなかった日の光をただじっと待つ。
ただそれだけの時間が長く、遅いもののように痛感しながら・・・。