「いや!!離して!!」
椿は、屈強なスパイに抱え挙げられていた。スパイの右肩で足をばたつかせ暴れるのだがびくともしない。蓮流は、他の屈強なスパイに捕まり身動きが取れない状態。
「椿ちゃんを離せ!!」
「駄目だ。」
「この子は、必要なの!!ごめんなさいね(笑)」
それでも蓮流は必死にスパイたちに食い下がっていた。身動きが取れない体制から必死に術を繰り出すのだが、どれも彼らに通用しない。どの術も軽く交わしていく。しかも、その蓮流の力を利用して、美麗の結界をいとも簡単に壊してしまったのだ。
「遅せぇんだよ、てめぇら。」
煙草を銜えながら、スパイ達に声をかける瀧蒸。その横で尚澄がもがき続ける椿の意識をサッと術で飛ばす。そんな彼らの後ろから気だるそうに出てくる涼香。そして、人の姿になった光の肩を持ちながら出てきた骸。涼香は、煙草に火をつけながら静かに蓮流の所まで足を進めると・・・
「あんたには悪いんやけど、あの子もらってくから。」
不敵な笑みを浮かべながらそう言い放ち、煙草を銜える涼香。そして、睨み付ける蓮流の腹に思いっきり蹴りを入れると、もだえ苦しむ蓮流の頭を踏みつけこう言い放った。
「姉貴とあのクズ野郎に伝えとけや。返してほしかったら頭下げに来いってさ。」
涼香達は、薄暗い土煙の中へと姿を消していく。蓮流は、必死に手を伸ばし近づこうとするのだが、無常にもその霧が彼の行く手を阻み続けるのだった。