螺旋階段を静かに下っていく椿。その後ろを気づかれないように付いて行く蓮流。椿が向かった場所は、光たちが閉じ込められた客室だった。ドアの前には香澄とともにいた黒スーツの男たち。武器を携帯しながら彼らの脱走を防ぐために警備をしている。蓮流は、椿と光の関係を知らない為、彼女の行動に驚きを隠せずにいた。
「椿様、ここは危険です。」
「すぐにお部屋にお戻りください。」
「でも・・・」
椿の目から涙が流れ落ちていく。その涙は、手にしていた小さなパンにぽつんと落ち、爪痕を残しながら吸い込まれていく。その光景を螺旋階段の柱の影から覗いていた蓮流。しかし、彼は何も気づいていなかった。その後ろから忍び寄ってくるもう一つの存在に・・・
閉じ込められた部屋の中は、光が暴れ続けたせいで崩壊しかかっていた。しかし、尚澄がなんとか光を説得。落ち着きを取り戻した光は、そのまま崩れ落ちるように眠ってしまった。
「やっと寝たし。」
そうつぶやいた涼香は、腕時計を見ながらニヤニヤし始めた。
「もうそんな時間なの?」
一緒に時計を見つめていた尚澄は、にこっとしながらジャケットのポケットから紙包みを取り出すと、中に入っていた金平糖を一粒、口の中にほうり込む。
「せやな。今度は俺たちの時間や。今頃どうなってるやろ?」
「まじ、見てみてぇわ。」
「面白そう(笑)」
「でも、あの飛行機もう使えそうにねぇ・・・」
「そこは大丈夫。俺が手を打ってるからさ(笑)」
骸はそういうと、ニヤニヤしながら雷獣の姿に戻った光にもたれかかる。
「なら安心だ。」
煙草に火をつけながら瀧蒸は胸元からジッポと入れ替わりに一枚の紙を取り出した・・・そこに書かれていたのは、椿のことだった。