「椿ちゃん。この子は雷獣っていって、雷を作って街に落とすのが得意な妖怪なんだ。」
そういいながら、そっと光を椿から引き離す。そして、光の頭をなでながらこう話しはじめた。
「正嗣と美佐子ちゃん、それに椿ちゃんに助けられてからずっと椿ちゃん達の事見守ってたんだよ。こいつ。なぁ(笑)」
にこっとしながら光の顔を見る祇儀。光は、下を向いたまま首を小さく縦に振る。
「こいつ、自分が人じゃないし、人に変化することもできないからってがんばって何年もかけて特訓したんだよ。で、帰ってきたら椿ちゃんは家出してるし、正嗣は美佐子ちゃんが死んじゃったショックで寝込んだ状態だしって・・・ショックで泣くから街は大嵐にしちゃうし、そこら中に雷落としまくるし(呆)それだけ、椿ちゃんのこと大好きなんだって(笑)」
「ちょっ!!おじさん!!」
顔を真っ赤にしながら、光は慌てて祇儀の口を塞ぐ。そんな光にやられ放題の祇儀はニコニコしながら、静かに光の手を振り払うと「じゃ、もどろっか(笑)」といって光の手を引いていくのだった。
それから数時間、応接間に怒号が飛び交いまくっていた。特に凛香と涼香の大喧嘩は、ついに手まで出始め、殴り合い状態。その光景を椿は直視できないでいる。
「そこまで!!」
そう叫んだのは緑涼だった。その腕の中では、椿が震えている。
「お願いだからそこまでにしてくれ!!見てらんないべさ!!」
「何でやねん!!外野は黙ってろや!!」
涼香がその言葉を吐き捨てた瞬間、凛香は涼香を殴ろうとするが「凛香も殴らない!」と言いながら、祇儀は凛香を右腕を力任せに握り締める。
「じゃが!!」
「じゃがじゃない!!やりすぎだ!!」
「仲ええのう(怒)」
「涼香君もだ!!」
「お前にだけは言われたないわ、クズ野郎(怒)」
「涼香!!」
さらにヒートアップしかけた兄弟喧嘩。それを強制的に止めたのは美麗だった。彼女は魔法を使って涼香を拘束。声も出せないようにした。
「あなた方の間に袂を分けることになる問題があるかもしれませんが、他の客人が怯えておられるので、ここで休戦していただけないでしょうか?」
冷静に言葉を発する美麗。その周囲にはさらに冷たい空気が流れ始める。その空気に恐怖を感じた涼香は慌てて首を縦に振るのだった。