応接間を出た椿と禮漸。
禮漸は、深刻な表情で椿にさっきの出来事を話し始めた。

「単刀直入に聞くけど、あの中に椿ちゃんの知り合い、いる?」

その質問に椿は驚きながらも「いえ・・・」と返した。
「いや実はな、あいつらを捕まえた時なんだけど、左端のやつがさ・・・ずっと“椿ちゃんに会うんだ”ってずっとぶつぶつ言ってたんだよ。」
「私に・・・ですか?」
「そう。でも、知らないんだよな?」
「はい・・・。」
「誰かと間違ってんのか、あいつ?」
不思議な空気がそこに流れていた。禮漸も椿も見覚えのない男。必死に思い出そうと、椿は記憶をたどり続けるのだが・・・

「やっぱり思い出せないです。」
「うん・・・。」

その頃応接間では、緊迫の状況が続いていた。
冷たい風が室内を包んでいく。そんな空気の中で凛香と涼香は互いの主張をぶつけ合い、清澄と尚澄は無言のまま。目も合わせようとしなかった。そんな状況で誰も気づいていなかった。そこにあるはずの姿がなくなっていることに。