その頃、小街では静かに動き始めていた。

コンコン

骸がドア越しに光に話しかける。しかし、ドアの向こうからの反応はない。呆れながら骸は「大事な話なんだ!少しでもいいからドアを開けてくれないか!」と声をかけた。
「・・・何?」
少しだけ開いたドアの隙間から、光の小さな声を聞いた骸。彼はその小さく開いたドアに右手をかけ無理やり大きく開こうとした。
「何すんだよ!やめろよ!」
「光!行くぞ、明日!」
「・・・どこに?」
「お前の大好きな椿ちゃんの所にだよ(笑)」
それを聞いた光は、抵抗するのをやめると同時に反動でよろけた骸の胸元をつかみ「本当?本当に本当?」と驚いた顔で、骸を揺らしながら尋ねてくる。

「揺らすな、揺らすな!!マジだって!どこに居るかわかったから!!」
「本当なんだ・・・」

そういうと、ぱっと手を離した光。勢いよく廊下に倒れこんだ骸の衝撃音が屋敷中に響き渡る。

「会える、椿ちゃんに会える!!」

ニコニコしながら、部屋に戻っていく光に「準備しとけよ!」と骸は声をかけた。

「やれやれ・・・。」

タバコに火をつけながら、その様子を遠くから見守っていた瀧蒸。その横で、呆れながらタバコを吸う涼香と菓子をつまむ尚澄。そんな彼らに瀧蒸は「お前たちも準備しとけよ。」と声をかけ、自分の部屋に戻っていくのだった。
そこに黒い小鳥がやってくる。ちょこんと尚澄の肩に止まるとすっと姿を消してしまった。そして、その場所に小さく折りたたまれたメモが残っていた。

「骸さ~ん!!届いたよ、屋敷図!!」
「わかった!すぐ行く!!」


動き始めた歯車。
美日月島と小街、二つの場所に点在した感情が少しずつ近づいて、ぶつかろうとしていた・・・。