数十分後

ある程度の屋敷の案内が終わり、屋敷の中心に存在する広いリビングへと案内される。その空間は、大きな窓と天井の吹き抜けから光が多く入り、白を貴重とした空間を輝かせる。その空間の中に紅と黒を貴重とした家具などが存在感を示していた。

「すごいきれい・・・。」

島のすべてを眺めることができる高台に建てられたこの屋敷からの風景は圧巻であった。島全体の風景と海の蒼とがリビングの白の中に何の違和感もなく溶け込んでいる。

「正嗣もこの景色に驚いてたよ(笑)」
そういいながら、祇儀が手にしていたシャンパングラスを椿に渡した。

「お父さんもここに来たことあるんですか?」
「あぁ(笑)美佐子さんと結婚する少し前かな。丁度、美麗ちゃんがここに引っ越してね、みんなで引っ越し祝いにね。」
「そうなんですか・・・。」
「そう(笑)で、ここで正嗣から美佐子ちゃんと結婚すること聞いたんだ。みんないきなりすぎてびっくりで・・・。」
「本当ですわ(笑)」
椿と祇儀の間に割って入るようにして美麗が話し始める。
「お写真で、あなたのお母様を拝見して“とても綺麗な人だな”って・・・結婚式は、大学を卒業して、しばらくしてからすることにしたって。」
「そうそう。で、僕達にも式に来てほしいって・・・」
「そうですね。すごく暖かい、アットホームな式でしたね。」
「うん。あの時は、人も妖も一緒になって正嗣と美佐子ちゃんを祝ったんだよ。ある程度姿は隠したけど。」
「そうなんですか・・・父は、愛されてたんですね。」

泣きそうになる椿。それを見た美麗はこう話を続けた。