「ちょっと失礼すっべ。」

緑涼はそう言うと、朱桜と橙梓の腕を掴むと縁側へと向かう。誰もが驚くのも気にも留めず、緑涼はそのまま家を飛び出していくのだった。

「さ、ついたべ!」

緑涼が彼らをつれてきたのは、正嗣と美佐子の墓の前だった。きょとんとする彼らに緑涼は「おら達の親だべ。」と墓に向かって話した。

「おらたちは、種族も違えば、生きてきた時間も違う。考え方なんかも違う。だけど、そんなおら達を正嗣は育ててくれたんだ、自分の子供として。人じゃないおら達を・・・」

墓の前にしゃがみながら、緑涼は淡々と話を続ける。橙梓と朱桜は、生暖かい風が運ぶ音と共に、緑涼の言葉を自然と拾っていた。

「正嗣が教えてくれたんだ“どんなに壊れても、家族は何度でも作り出せるんだよ”って。どんな事があって“きょうだい”だから、焦らなくても家族である事に変わりはないんだよ。それに、おらは、昔ばっかり見ちゃいけないし、そこから逃げだしてもいけないと思うんだ。だから・・・」

緑涼は、橙梓と朱桜のほうに顔をも向けるとこう言葉を投げかけた。

「一旦、リセットしたらどうだべか?今の現状を。」

と・・・

「いい事言うね~緑涼君(笑)」

その声に後ろを振り向いた緑涼。そこにいたのは、別の人の墓にもたれかかりながらニコニコ笑う祇儀だった。

「し、祇儀さん(驚)」
「驚いた?(笑)」

ニコニコしながら、祇儀は橙梓と朱桜の間に割って入り肩を持つと・・・

「その前に、お互いの膿を出しきらないとね(笑)」
といいながら、二人を向かいあわさせたのだった。