「どした?」
「こ、こここここ、ここ!大王様と奥方様のご友人、春河さんのお宅だよ(驚)」
「大王って・・・閻魔大王の?」
「そう!古くからの友人。春河正嗣さんって言うんだけど、その娘の椿さんが鬼と狐とかまいたちと半魚人と一緒に住んでるんだ。僕は、椿さんしか会った事ないけど、とてもいい人だったよ。」
「ふ~ん・・・でも、人間なんでしょ。」
「人間だけど、誰に対しても同じように接する事のできる人。奥方様いわく、正嗣さんもそんな人間だったんだって。だから、大王様も奥方様も信頼してるんだってさ。」

遊佐はそう言うと、目の前に置かれたばかりの冷酒を自分で枡の中に注ぎ口をつける。喉を通る冷たい感覚を味わうと「ぷはっ!」と無意識に声を出していた。

「人間にいい思いなんてないからさ、俺。」

少し不安な顔を覗かせる橙梓がそこにいた。そんな彼の顔を見て遊佐は少し心配になるのだった。


その頃、春河家では・・・

「おやすみなさ~い。」


就寝時間に入っていた・・・


翌朝5時

「さ、畑へ行かねぇと・・・。」

眠気眼をこすりながら、緑涼は縁側から畑へと向かおうとしていた。

「よいしょっと。」
「あの~・・・。」

小さな声が緑涼の耳に入るのだが、その声の主を見つからない。

「あの・・・」

緑涼の足元から聞こえてきたその声。視界を下に降ろしてみると・・・

「この姿ですみません。」

緑涼の右足にチョコレート色の狸がちょこんと前足を乗せ、緑涼を見つめていた。

「ど、どちらさんですか?」
「ぼ、僕・・・蒼って言います。月見ちゃんと朱桜ちゃんのことで・・・。」


「「きゃ~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」


人の姿になってそう話す蒼と緑涼の耳に椿達“女性陣”の悲鳴!その声に、寝ていた誰もが目を覚まし、椿の部屋へと向かって走り出した。