「畑泥棒だべ。」
「違います!!」
「じゃ、何でこんな時間にあそこにいたべか?」
「それは・・・」
「畑泥棒じゃないって言うんだったら、言えるだろう、理由。」
「・・・。」
緑涼とその女の子が水掛け論を繰り返していた。椿は、その様子を見ていることしかできずにいる。
「とにかく、連絡したほうがいいですよね?」
そういうと、蓮流は玄関へと向かおうとする。それに気づいた彼女は慌てるようにして「言います!!」と思いっきり叫んだ。
「私、月見って言います。正嗣に頼まれて、その・・・皆さんの事・・・いつも見てました。」
そういいながら、月見は猫の姿に戻る。尻尾が二つに割れた小さな子猫。その姿に椿は何かを思い出した。
「月見さん。」
「・・・は、はい(慌)」
「昔、ここに・・・住んでませんでしたか?」
月見は、人の姿に戻ると「はい。」と静かに答えるのであった。
「私は昔、正嗣に助けてもらったんです。ちょうど、悪い事たくさんしてた時期で、色々あって・・・そんな時に正嗣が色々相談に乗ってくれたりして・・・病気で死んじゃうってわかって、病室にお見舞いに行った時に頼まれたの。僕の代わりによろしくって。」
その言葉に、椿は泣きそうになりながら「月見さん、だったんだ・・・。」と小さな声でそう話す。
「・・・お父さんが言ってた“黒猫ちゃん”って、月見さんの事だったんですね。」
「そうだと思う(笑)奥さんも椿ちゃんもいなくなって、寂しそうにしてるんだもん。私も、正嗣のおかげで色々助けられたし、私も助けなきゃって。あ~っ、ばれちゃったな・・・怒られるかも。」
そんなときだった。