「月見~。よくそんな事できるよな(呆)」
「正嗣に頼まれたんだもん!椿ちゃんと緑涼さん達の様子見てきてって。」
「っているかさ~、暑くない?」
「ここ、木陰だから涼しいはずなんだけどな~。」
月見と朱桜。
仲良し猫コンビの彼女達が、静かに春河家を見つめていたのだが・・・
「姉さん!!大変です!!逃げてください!!」
朱桜の仲間が慌てて駆けつけてきた。それを見るなり、何か嫌な感じがした朱桜は、すぐにその場を去ろうとするのだが・・・
「何でそんなに俺から逃げようとするの?」
彼女達の後ろに彼はスタンバイしていた。そして、朱桜の腕を掴むと、思いっきり引っ張り始める。
「離せよ!お前が嫌だから逃げてんだろ!!」
「お前って、お兄ちゃんに向かってその口はないだろ!!」
朱桜の兄、橙梓(だいし)
肌が白く、細身で一見病弱に見える彼なのだが、すこぶる元気。あらゆる世界で暴れまくる妹が心配で、どんな手段を使ってでも妹を自分の下に連れ戻そうと躍起になっている。そして、見つけるとこうやって迎えに来るのである。
(朱桜は、こんな橙梓が大嫌いで世界中に逃げ回るようにして暴れているのだが。)
「相変わらず、大変だね~。」
月見の横にどしっと座ると、腰にぶら下げていた水を飲む男。
橙梓の友達で、化け狸の蒼(あおし)
朱桜の為に東奔西走する橙梓の為に、自分なりの情報収集をしている相棒ともいえる存在。少しおっとりとした性格だが、怒ると何をしでかすかわからないところもある。
「そ、そうですね。」
「あいつ、朱桜ちゃんの事になるとあぁなるからさ~。唯一の家族が心配なのはわかるんだけど、もう、あれじゃシスコンだよ(呆)」
実を言うと、月見は蒼に憧れている。
友達思いで何事にも真摯に向き合うことが出来る彼のことが。