6月
薄暗い空から降りしきる雨が、畑の作物達に栄養を与えている。
春河家の面々は、毎年恒例の蓮流の実家へお墓参りに行っていた。みんなで作ったお弁当と凌縁の店で手配した酒を片手に食事タイムを取っている。そして、蓮流は両親の墓へと向かう。
“あれ、誰かいる・・・珍しいな。”
両親お墓の前に、黒いスーツ姿の男が菊の花と一升瓶の酒を供えていた。長髪を一つにまとめた、身長が180以上ある大柄な男。その背中を見て蓮流は誰かすぐに気がついた。
「深波(しば)君?」
蓮流の声に驚きながら振り向いた男、深波。
海坊主の彼は、蓮流とはいとこである。
しかし、それぞれのお家事情で顔合わせ程度しか会っていない。そんな彼と久しぶりに顔を会わせたことで蓮流は喜びでいっぱいなのだが・・・
「仕事、あるから・・・」
無表情な顔で、そう言った深波。そしてそのまま帰ってしまった・・・
少し寂しくなった蓮流。
そんな気持ちを抱えながら、両親の墓前に静かに酒を供えるのだった。