「大丈夫、宗次郎くんはきっと戻ってくるよ。だって花の婚約者だもん。」
「婚約者って…小さい時に結婚しようって約束しただけだし…それに宗次郎は多分覚えてないと思うよ。」
そう、あたしと宗次郎は小さい時に結婚の約束をした。
といっても小さい子供がした約束だから絶対に結婚しないといけないというわけではないんだけどね。
「大丈夫!きっと覚えてるよ。…そうだ今日合コンあるんだけどさ、行かない?」
「あー…ごめん。今日は無理かな。」
今日は昨日買った新撰組物語を読むと決めていたんだ、ごめん利子!
「そっか、じゃあまたね!」
「バイバイ!」
あたしの家は大会の会場であった場所から近く、徒歩10分ほどで着く。
ガチャ
「ただいま。」
「おかえり、花。」
家に入るといつも通り兄が出迎えてくれた。
「お兄ちゃん、お母さんは?」
「ん…あー。食事?をしに行ってるよ。」
「そっか。」
お母さん、まだ帰って来ていないのか。
ま、これもいつものこと。
お父さんは海外に単身赴任しに行っている。
お父さんが出ていく前から少しお母さんとお父さんの様子が可笑しいとは思っていた。
でもお父さんが出ていってからすぐわかった。
家に帰ってもいるのはお兄ちゃんだけ。
お兄ちゃんにお母さんの居場所を聞くと返ってくる返事はいつも「食事。」
多分、お母さんは不倫しているのだろう。
あたしたちの知らない男の人と。
まぁ、予想はしていたからほんの少しだけ胸の痛みは緩和されたけどやっぱり……。
痛いものは痛い。