「広ーーーーーいっ!!!」


案内されたのは、畳みの匂いがするきれいな和室だった。


「ええなぁ・・・」


「うんっ!!!」


何がいいかって、春君と来れたのが一番嬉しいよ。


「まだお風呂まで時間あるなぁ」

「うん、」


「せやっ!海行こか?」


「行くっ!!!」


歩いてちょっとの場所にある海まで、二人で向かった。


「少し寒ない??」


「大丈夫だよ〜」


冬の海には、人は居なくて。


「捕まえてごらん♪」


「アハハ、待て〜」


・・・なんて、昔のドラマみたいな事するはずもなく。


ただじっと、波が行ったり来たりするのを眺めていた。


「付き合う前さ、言うてたやろ?」


「・・・?何て?」


「デートするなら海がいい〜って」


「あー、うん(笑)」


何か昔から海が好きで。
デートするなら海がいいなって思ってたんだよね。


「俺・・・あんまこうゆう所連れてかれへんからさ。」


少し俯きながら言った春君。


「・・・海はね、好きだよ。」


「おん、知っとるよ」


春君はそう、笑いながら、答えた。


「でもね、春君と居れるなら。それだけでいいんだ♪」


一緒に居られない時があるから、

一緒に居れれば、それだけで幸せなんだ。


「ありがとう・・・」


笑いながら、震えた声に。


私は笑って答えた。