「もしもし?」
『・・・今、いつものスタジオに居んねん。来て』
一方的に切られた電話。
足が勝手に進んで、いつものスタジオ。
それで通じる場所へ。
ただひたすら急いだ。
+1の楽屋。
の、手前。
ずっと、ずっと待ってた春君の姿。
「久・・・しぶりだね。」
目の前にしたら、何故か言葉に詰まった。
「体・・・大丈夫なん?」
やっぱり、連絡は・・・いってたんだ。
「うん、もう大丈夫だよ。」
「そっか・・・」
こんなに、ぎこちない空気が流れるのは、初めてで。
何を言えばいいのか分からなくて。
結局、沈黙を破ったのは春君だった。
「別れて。」
あまりにも真っ直ぐで、唐突な言葉。
「・・・え?」
聞こえてるけど、今の『え?』は理解するための時間と、
もしかしたら違う言葉が返ってくるかもしれない、
そんな望み。
「もぅ、止めよ。」
真っ直ぐに、私を見る瞳。
逸らしたのは・・・
私の方だった。
「・・・バイバイ。」
それ以上の言葉、言えなくて。
春君の顔も見ないで、
ただひたすら走った。
ードンッッ。
すれ違いざまにぶつかる人を、気にする余裕もなくて。
もつれる足を、強引に前に進めながら。
溢れる涙を止める事もしないで。
走ったのは、二回目だ。
でも、今度は、逸らしたのは。
私だったから。