自転車が倒れている。

なんか、大量のお札がバックの中に入っているのを見た。

どうやら・・・強盗犯みたいだ。

「ねぇ、何を見ないほうがよかったの?」
「いや、こんな現場・・・」

浩哉は小刻みに震えている。

「どうしたの?」
「ここでこうなってるってことは、近くの銀行・・・だよな」
「そりゃぁ・・・」
「俺のオヤジが・・・」

あたしは、はっとして浩哉から目をそらした。

「あぁ、近くの銀行に入ったんじゃなくて、こいつは空き巣。」
「あ・・・そうっすか・・・」

浩哉は安心した様子で警官の話を聞いた。

「俺のオヤジさ・・・」
「うん」
「あっ・・・いや、わり、なんでもねぇ。」

浩哉は、行くぞといってすたすた歩いていった。


その時、浩哉の心の中がすごく気になりだした。




「あぶねぇから、家まで送ってってやるよ」
「え、いいよ」
「いいから」
「うん・・・」

沈黙をぶち破った浩哉の気遣いを、あたしは無理やり載せられたようだった。