榛名は覆い被さるように三浦を包んだ。


その大きな背中に両手を這わせると、ぴくりと彼の震えが大きくなった。



「やめろ、近付くなよ、」


懇願するように腕を振り払おうとした三浦を、決して離すわけにはいかなかった。



「俺だって、結局”あいつ”の息子なんだ、誰も、誰も守れやしないんだよ!」



声を荒げて抵抗する三浦に榛名は勢いよく首を振った。


「そんなことない!」



いつの日だっただろうか。


父親は酒に溺れ、心に、そして生身の身体にも大きな傷を残していったのだと、彼の口振りが哀しく響いた。


どれほど怖かったのだろう。


その記憶は現に、彼を今でもがんじがらめに縛って、苦しめ続けている。



そこで、ここのところ三浦が自分の目の前に姿を現さなかった理由にようやく気がついた。


溢れた涙が、三浦の髪を濡らす。



ーー後輩に怪我を負わせたショックから、自分にも代償として同じだけの傷を負わせようとしたのだろう。


その引き金を当人ではなく、上野に弾かせようとした。


取り返しのつかない行為をしようとしていた自分は、凶暴な父親の血を受け継いでいるのだとまざまざと感じさせられたのだろう。


そうして心底失望したのだろうーー自分自身に。