どれくらい、泣き続けていたことだろう。


上顎は圧迫されているし、目もひりひりとする。


目蓋も腫れてしまってうまく開かなかった。


「落ち着いた?」


ひきつけも無くなったところで声をかけてきた隣の彼に、榛名は俯いたまま小さく頷いた。


「じゃあ、俺行くけど。顔の腫れ収まってから教室行った方がいいよ」


立ち上がった彼がそう言ったので、名残惜しい気持ちがしたけれど、か細い声で礼を言った。


そうして足音は遠ざかったと思えば、ドアの前でぴたりと止まった。


振り返ると、同じように振り返った彼と目が合う。


何かを言い淀んでいるような眉の下がり方を不思議に思ったけれど、彼は開いた口を一旦閉じて、


「じゃあ、」


とだけ言って、去っていった。