「可愛いなあ、名前は?」
土曜の昼下がり、駅前広場はたくさんの人で賑わっていた。
「こはるだよ、4さい!」
「そしたら指は3本じゃ足りないな」
ほのぼの和む男子高生と保育園児、それから。
「北村にそっくりだな」
付き添い人に成り下がった榛名は項垂れた。
あんなに浮き足立ってそわそわしていた時間が夢のようだけれど、それもこれも。
「年の離れた妹には勝てなくて」
「実際見てみると、その気持ち分かる」
この笑顔は敵わないよな、と小春を覗きこんだ三浦が呟いた。
「ごめんね」
「なんで謝るんだよ。楽しくなりそうじゃん、な?」
「な!」
おうむ返しの小春の頭を、三浦がくしゃっと撫でる。
「じゃあ行くか」
小春の手を何気なく引く彼の背中を追いかける。
榛名の靴音は軽やかに弾んでいた。