いつもより十分早く学校に着き、教室に荷物を置いて職員室へ向かった。
特定の場所にある日誌とプリント、それから授業変更の有無を確認して、もう一度教室へと向かう。
8時手前の教室には、まだまだ人はまばらだ。
澄んだ気分で朝を迎えられるので、榛名はこの時間が好きだった。
窓際後ろから二番目の席について、日誌をぱらぱらと開く。
5月某日。天気の欄には太陽のマークを記す。
見開き左のページはまっさらで、補助欄に朱色で書かれた文章がやけに目立っていた。
欠席した彼女を心配する担任の文章を読んで、榛名は右ページの補助欄にその返事を綴った。
名前の欄にもさらさらとペンを走らせる。
「”榛名”って、そう書くのか」
頭上から降ってきた声に、榛名は手を止めた。
見上げたところで榛名の大きな目が、一段と見開かれる。
驚いた彼女を、三日月形の唇が満足そうに笑った。
そうして前の席に腰掛けたのは、三浦だ。
「なんで、って顔してるな」
暫く固まった顔の筋肉を慌てて動かす。
図星だった。