結局、2日間をもって完成したミサンガを小春に贈ったのだが、彼女はそれをすぐに外したがった。


腕に何かを付けるということに、どうやら違和感があったらしい。


結び目を仮留めしておいたことに安堵していたところ、『緑じゃなくてピンクの方がかわいいよ』とすかさず、追い討ちを掛けられた。


子供は素直である。


母親にやるという選択肢は無く、それを身につけた父親を想像してみた。


榛名はそのせいで暫く夕飯に手を付けられないほど、櫻子と共に大笑いしたのだった。


そういう訳で行く先を失ったミサンガは、愛着が湧き始めたので捨てるわけにもいかず、自室の机の引き出しにそっとしまうという、何とも中途半端なところに落ち着いた。




体育教師の千原に呼び出されたのは、その翌日の放課後のことだった。


放送では三浦の名前も一緒だったので、ざわついた心のまま、榛名は教官室へ向かった。


「ああ、北村さん」


待っていたのは、千原ただ1人だった。何となく拍子抜けしてしまった自分を不思議に思いながら、榛名は千原からA3の大きさの紙を受け取った。


「体力テストのデータ。テストが遅れてしまった人の分が、今日ようやく届いてね」


千原の説明もそこそこに、榛名はその結果にざっと目を通した。


平均的な数値は予想通りだった。期待も楽しみも感じられなかった結果は再び見返してしまえば、そのまま自室のごみ箱行きであろう。


それを半分に折り畳んだ時、腕組みをした千原が口を開いた。


「北村さんって、三浦くんと仲良いの?」