「泣いてるあんたを見て気付いた。そういう古傷はずっと残るんだ、目を反らしてる限りはな」
そこで一つ言葉を区切った。その表情は今までのそれよりも、ずっと素に近いような気がした。
「俺は少しずつ向き合ってみようと思うんだけど、あんたはどうする?」
とても軽やかな提案だった。けれどもその内側には、安易に頷くには大きすぎるリスクがあった。
出会って数日の他人にこんなことを言われても戸惑うばかりなのに、それでも、三浦の両の目には、決して生半可な思いを語っているわけではない覚悟の色が榛名には見えた。
そうして、榛名は自然と頷いた。
その表情を見留めた三浦は、初めて控えめな笑顔を湛えていた。