何となく掴み所のないひとを、何となく傷つけてしまった。


軽口を叩いていなければ、どこまでも平行線を辿っていたのかもしれない。


釈然としない部分も勿論あった。


それでも癇(かん)に障る言葉をかけたのなら、きちんとお詫びをしておきたかった。


しかし、榛名は三浦のことをほとんど何も知らなかった。


名前も、クラスも。


分かっていることは同級生ということだけだった。


途方に暮れた矢先、思わぬ知らせが榛名の元へと飛び込んだ。


「はるちゃんって三浦と知り合い?」


「へ、」


榛名の箸からミートボールが滑る。


声の主は、緋山瞬(ひやましゅん)だった。


名前をもじって“はるちゃん”と呼ぶ彼は、人懐っこい犬のような笑顔で、購買のパンと自前の弁当を交互に頬張っている。


「三浦くんって、瞬と同じクラスだよね」


隣に居た彩花が呟くと、瞬は頷いた。


「時々一緒に飯食ったり。結構仲良いんだけどさ。そんで、今日、はるちゃんのこといろいろ聞かれて」


「――いろいろ」


「そう、いろいろと。そんで、あいつ、今日の体育の授業出るっつってんだよ。何があったんだか」


何気なく耳を奪われた言葉に榛名は箸を置いた。


彩花も疑問を投げ掛ける。


「今までさぼってたみたいな言い方じゃない、」