七月。澄み渡る快晴で、体育祭には恰好の日和だった。
グラウンドの照り返しに目を細めながら、榛名は本部のテントへと顔を出す。
簡易テントの下では、銘々の仕事を持ち込む委員たちでごった返していた。
周りの様子を窺っていると、後ろから肩をとん、と突かれる。
「あ、居た居た」
振り返ると爽やかな顔が、お疲れ、と笑った。上野だ。
額に滲んだ汗を袖で拭うも、清涼感が溢れているのは此れ如何に、と榛名は感心した。
薄い紙切れ1枚を、はい、と差し出される。放送用の原稿だ。
「女子のバレー、だいぶ健闘したよね」
上野が歯を見せる。ああ、と榛名は頷いて、はにかんだ。
体育祭は二部に分けられていて、午前は球技大会、午後はリレーを含むクラス対抗の競技が行われる。
午前の球技大会では、榛名は彩花と共にバレーの試合に出たのだが、これが準優勝となった。
決勝戦では上級生に気圧されてしまったが、経験者がひとりのみというチームで、『本当に頑張ったね』と褒め称えあったばかりだったのだ。
その時の高揚感を思い出すと、自分は割りとお祭り事が好きなのだと思い知らされる。
「男子はサッカー優勝でしょう、すごいね」
榛名がそう言うと、上野は頭を掻いた。
「いや、あれはまぐれだよ。バスケも良いところまで行ったみたいなんだけどな、五組に負けたみたいでさ」
ちっ、と軽い舌打ちをして『三浦は余計なことばっかりするよなあ、』と上野が漏らす。その名前に、榛名の鼓動が一拍、強く音を立てた。
2週間、三浦と口を効いていなかった。
というよりも、榛名は意識的に避けていた。避けざるを得ない理由があったのだ。
そんな気持ちをぐっと飲み込むと、受け取った原稿を片手に、二人は放送ブースへ向かった。