「どの面下げてここに来たんだ?」
練習が再開したのを確認すると、上野は真っ直ぐに俺を捉えて口を開いた。
「お前と、それから、岡本に会いに来た」
上野はその目を見開き、どうして知っているんだ、と言いたげな顔をした。
隠しているつもりでも、心情が素直に表面に出てくる。上野はそういう奴だった。
「千原先生に訊いた。俺が辞めなければ、岡本が骨を折ることは無かったんだし、それに、」
『俺を庇ってくれたんだろ?』俺がそう口にすると、上野は掌を握り締めた。
「お前のためなんかじゃない!ただ、ただあいつが可哀想だと思っただけだ、だって、そうだろ、お前が、」
「岡本が失敗したのを、俺が辞めたせいにするのは、岡本の力を信用してないようなもんだってことだよな。だからすぐには言わなかった。岡本の為に、チームの為に」
声を荒らげた上野の言葉を遮る。
こいつの真意は分かっていた。
人一倍周りを見ることが出来るから、誰にとっても適切な解決策を探ったのだ、と。
そしてその解決策が、俺の為に、という必要条件を含んでいたことも。
だから、俺は、押し黙る上野に勢い良く頭を下げた。
「すまなかった」