他人よりも砂埃が鬱陶しく感じるようになってから、グラウンドに留まることをなるべく避けてきた。
遥かに遠かったはずのホイッスルが段々と耳につくように響いている。
色とりどりのユニフォームが飛び交うグラウンドの端を制服姿で歩いていた俺は、明らかに不自然だった。
腿を高く上げて、リズムの良い走法を身に付けるためのウォーミングアップをしている集団を目指して歩いていた。
その連中に手を叩きながら声を掛けているのが、上野だ。
あいつは、役についたのか、通りで部を背負っているような言い方をしていた訳だと納得した。
不審な人物が横目に入ったのか、俺を見ると、動きを失くした。
呆然とした顔を、俺も立ち止まってただ見つめていると、上野は後輩に何かを言って、こちらに向かってきた。
さっきの顔はどこに行ったんだと言いたくなるくらい、険しい顔つきで俺に向かって歩いてくる。
割と勢い付いているようだから、もしかしたら俺は一発殴られるかもしれない、と冷静に、かつ不謹慎な冗談を抱いた。
すると、上野の歩は俺に劣らずの不自然さで急停止した。
「なんだその格好」
「見れば分かるだろ、制服だよ」
「お前、いつからそんな偏屈になったんだ」
「そんなのずっと変わってねえよ」
売り言葉に買い言葉、上野は俺を睨み付けていた。
その後ろで見知った顔がちらほらと、怪訝そうに様子を窺っている。
上野もその視線を辿ると『練習続けてください』と促した。