たぶん5センチ。
それがあたしと和くんの顔の距離だった。
「言ってくれただろ。素の自分を見せられないのは俺を好きだからって。うれしかったんだ。自分をよく見せたいって気持ちもわかるし。
そんなふうに、俺の前では可愛く見せようとするとこも含めて、いずれは悠衣の全部を見せてくれたらなって思う」
「でも、本当に可愛くないよ? 鉄平にはいつも小うるさく怒鳴ったりして、まるで小姑みたいかも」
「うん、知ってる」
「え?」
まさか、そう返されるとは思わなくて、目を見開いた。
涙はいつの間にか止まってる。
「実は、練習試合のたびに幼なじみにはっぱかけるの、見てたんだ」
「ええ!?」
あ、あんな姿を見られてた?
「でも、ああいう悠衣も嫌いじゃない。あの鉄平って男は、あれくらい言われなきゃやる気にならないみたいだし、アイツのためにわざときついこと言ってるってわかってたから。あれは、アイツに合わせた励ましみたいなものだろ?」
「和くん!」
いつもよりも高い声がでる。