──泣き崩れてから
何時間経ったんだろう


「紫雲君。桜依ちゃんの携帯」


看護師さんから渡されたのは、
桜色のスマホ


「那代さんに…」


渡してください  と言おうとした
すると那代さんは
「私は、見たわ。 紫雲君との思い出ばかりで…
桜依は、幸せそうに笑っていたわ」

「じゃあ…見てもいいですか?」

「ええ、もちろんよ」

桜依のスマホには
いろいろな僕らが居た


一緒に食べた林檎。
あの時は、林檎が上手く
切れなくて苦戦した。


病院の秋祭り。桜色の浴衣を着て…
あれ?こんなに顔を真っ赤にしてたっけ?


ウサギの人形を抱いて、寝ている桜依
僕がこっそり撮っだやつだ

本を読んでいる桜依。読書に集中して
僕の事ほったらかしだったけどね


僕の寝顔の写真。あ!これ、隠し撮りだ
いつの間に撮ってたんだ。
しかもちゃっかりトプ画にしてるし

スライドショーにして見ていると
いろいろなことがあったな…と思える

「那代さん、ありがとうございます。
桜依を生んでくれて」

「…」
那代さんは泣きながら首をふった。

「桜依に会えて本当に良かったです」

スマホの写真に写っている
桜依は笑顔はどれも綺麗だった。