雅也君の婚約の話を聞いて、私はずっと雅也君を見ていた。

あ、ストーカーとかじゃないよ?(笑)
授業中ボーッとしてる時に見ちゃうというか……。


喋りたくても怖くて喋れない。

私……いつからこんな臆病になったんだろう。


「愛奈。屋上行って外の空気吸お?」

「結衣……。うん」


やっぱり結衣は優しいな。

こうやって私を気づかってくれる。

ありがとう。




この時は丁度昼休みで、屋上でお弁当を食べることになった。


「ん~!涼しいね!」

「うん!」

何だろ。
すごく落ち着く。
体だけじゃなく、心も涼しくなってきた気がする。



「~~♪」

鼻歌を歌いながら結衣はお弁当箱を開けていた。

明るくしようとしてくれてるんだね。

気使わせてごめん。


「愛奈、食べないの?」

「え、ううん。食べる食べる!」

そうだ。
もう忘れよう。
婚約のことも、昔のことも、それに……雅也君のことも。


「あれ?ねぇあれ、佐川君じゃない?」

「え!?」

忘れるって言った矢先に『佐川』って名前を聞いて過剰に反応してしまう。


結衣が指を指す方向には、雅也君が寝転んで空を仰いでいる姿があった。


「ま、雅也君……」

その姿を見て、昨日の雅也君を思い出す。

婚約者の人とキスをしていたこと……。

私まだ手を繋ぐことしかしてないのに。


「良い?愛奈。女はね、どこまでも好きな人を追いかけるの。婚約したからって、相手を好きって訳じゃないでしょ?』


な、なんか結衣に言われると凄い説得力。


「取り合えず、声かけるだけかけてきな!」


結衣……。


「うん。分かった」


結衣ありがとう。
私、勇気出して頑張る。